判定の原則
8%と10%の分かれ目
個別の事例を覚えようとすると、店ごとに違う場面が必ず出てきて手が止まります。 分かれ目そのものを先に押さえておけば、Q&Aに載っていない場面でも当たりを付けられます。 順に見ていきます。
1. 軽減税率の対象は「飲食料品の譲渡」だけ
8%が適用されるのは、飲食料品を譲渡する取引です。 ここでいう飲食料品は、人の飲用・食用に供されるものを指しますが、酒類と医薬品・医薬部外品等は最初から除かれています。 ノンアルコールビールや甘酒は酒類にあたらないため飲食料品ですが、 みりんや料理酒は酒類にあたるものが多く、10%です。
そして、飲食料品の譲渡からさらに2つが外されます。外食(飲食設備のある場所で飲食させる役務の提供)と、ケータリング(相手方の指定した場所で行う調理・給仕等を伴う飲食料品の提供)です。 この2つに当たれば10%。当たらなければ8%。判定の骨格はこれだけです。
2. 「飲食設備」は自分の店の椅子だけではない
飲食設備とは、テーブル・椅子・カウンターその他、飲食に用いられる設備をいいます。 規模も目的も問いません。立ち食いのカウンターだけの店でも飲食設備はあることになりますし、 広さや席数の下限もありません。
重要なのは、他人が所有する設備でも飲食設備になり得ることです。 フードコートのように、席はショッピングセンターの所有でも、出店者が客に使わせる合意があれば その出店者にとっての飲食設備になります。反対に、キッチンカーで売った客が 勝手に近くの公園のベンチで食べる場合は、店が設置も管理もしていないため飲食設備にはあたりません。
つまり見るべきは所有者ではなく、その設備を客に使わせる関係が店との間にあるかです。
3. 判定は「提供する時点」で、意思確認は掲示でもよい
飲食設備がある店では、同じ商品でも客ごとに税率が変わります。 判定するのは商品を提供する時点で、客が店内で食べるつもりか、持ち帰るつもりかで決めます。 持ち帰ると言った客が後から気を変えて店内で食べたとしても、提供時点の判定をさかのぼって直す必要はありません。
意思確認は、必ずしも一人ずつ声をかけなくても構いません。 「イートインをご利用の方はお申し出ください」といった掲示による確認でも差し支えないとされています。 大切なのは、店として判別する仕組みを置いていることです。仕組みを何も置かず全部を8%で処理する運用は認められません。
休憩スペースがあっても「飲食はご遠慮ください」と掲示し、実際にその通り運用しているなら、 その設備は飲食設備として扱わなくてよいとされています。 逆に、掲示していても客が現に食べているのを放置していれば、飲食設備があるものとして扱われます。掲示と実際の運用が一致していることが前提です。
4. 出前は8%、ケータリングは10%
どちらも「客のところへ持っていく」点は同じですが、扱いは正反対です。 そばの出前や宅配ピザは、作った料理を届けて渡すだけなので、 運搬を伴う譲渡として8%です。
一方、客の自宅や会議室に出向いて、そこで調理したり、盛り付け・配膳・給仕を行ったりすると、相手方の指定した場所で行う役務を伴う提供にあたり10%になります。 食材を客が用意し、調理だけを請け負う料理代行も同じく10%です。
境目は「運んで渡すだけか、現地でサービスまで行うか」。 届け先で味噌汁を器に取り分けて渡す程度は、盛り付けの範囲として8%とされています。
5. 食品以外が混ざる商品は「一体資産」で見る
食品とおもちゃがあらかじめ一体になっていて、1つの価格しか提示されていない商品を一体資産といいます。これは次の2つを両方満たすときだけ、 全体が8%になります。
- 税抜の販売価格が1万円以下であること。 判定は、原則としてその一体資産1個あたりの価格で見ます。
- その商品の価額のうち食品の占める割合が3分の2以上であること。 割合は原価など合理的な方法で計算します。
どちらかを外れると、食品部分も含めて全体が10%です。 なお、食品と食品以外を単に一緒にレジに通しただけ(それぞれの価格が分かる)なら一体資産ではなく、 食品は8%、それ以外は10%と別々に判定します。
6. 容器・包装・おまけの箸は、原則として商品の一部
持ち帰りのために通常必要な包装材や容器は、飲食料品の譲渡に含めて8%で扱います。 割り箸・スプーン・おしぼり・ストローを無償で付ける場合も、 その代金は商品の対価に含まれているものとして8%です。
ただし、容器代を別建てで受け取る場合は、その容器自体の譲渡なので10%になります。 装飾を施した重箱など、それ自体に販売価値のある容器も別扱いです。 「サービスで付けるか、代金を分けて取るか」で結論が変わります。
7. 価格表示は、統一しても分けてもよい
税率が違う以上、税込価格をそろえれば本体価格が変わり、本体価格をそろえれば税込価格が変わります。 どちらの形を取っても構いません。店内価格と持ち帰り価格を分けて併記する方法も、 税込価格を統一する方法も、どちらも認められています。
大切なのは、どの価格が何を指すのか客に分かるように表示することです。 1つの値札に両方の税込価格を併記するのが分かりやすい形です。
迷ったときの順番
- 酒類・医薬品等ではないか(該当すれば10%で確定)
- 飲食設備があるか(自店の設備、または客に使わせる合意のある他者の設備)
- 設備があるなら、提供時点で客はそこで食べるのか、持ち帰るのか
- 届ける取引なら、渡すだけか、現地で調理・給仕まで行うか
- 食品以外が混ざるなら、一体資産の2条件(1万円以下・食品3分の2以上)を満たすか
この順で当てはめても判断が付かない場面は、49事例の一覧で近いものを探してください。 それでも残る論点は、所轄の税務署か税理士に確認するのが確実です。
出典:国税庁「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」平成28年4月(令和8年4月改訂)、消費税法および消費税法基本通達(当サイトでの確認 2026年9月12日)。
本ページは一般的な考え方を整理した参考情報です。個別の取引については事情により結論が変わり、 見解が分かれる論点もあります。最終的な税務判断は、所轄の税務署または税理士にご確認ください。